【2022年10月改正】産後パパ育休は社会保険料免除で手取り増も!

出産・育児
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みる1級FP技能士

1級FP技能士、日本FP協会認定AFPです。2022年6月のCFP資格審査試験では全国15名の「6課目一括合格者」になりました(未認定)。他に2021年宅地建物取引士試験に合格しています。
私自身も一児の父であり、子育て費用に関する情報を発信します!

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【2022年10月改正】産後パパ育休は社会保険料免除で手取り増も!

※制度の概要は知っていて、「社会保険料免除の条件だけ調べてます!」という方は、社会保険料免除の条件を徹底解説!【カレンダー付き事例多数】から読めばわかるようになっています。

2022年10月、改正育児・介護休業法により、産後パパ育休制度(出生時育児休業)がスタートしました。

これ、意外にも悪くない制度なんです。それとは別に通常の育児休業も使い勝手が良くなって、パパの育児参加については国も本気を出してきたのが伝わってきます。

産後パパ育休が意外と悪くない理由を挙げます。

1.育休本体とは別個に取得できる
2.2回に分割して取得できる
3.社会保険料が免除になる(複雑な要件があるので詳しくやります)
4.一定の条件の下、就労することができる(休業を申し出やすい)

育休を取ると心配なのは収入の低下だと思いますが、社会保険料の免除という強力な後押しがありますので、やり方によっては休んだ方が手取りが上がります。これも実際にモデルケースを使って計算していきます。

残念ながら雇用保険の加入者であるパパ限定の制度ではありますが、ぜひ最後まで読んで周りのパパやママにも教えてあげてください。

まずは制度の概要

通常の育休との違いは?育休本体を軽く解説

まず通常の育休を軽く解説します。たまに「そんな制度うちの会社にはない!」という方がいますが、これは国の公的制度ですので、以下に該当する方は取得して給付を受ける権利があります。会社側がこれに対して減給や解雇など労働者に不利益な扱いをすることは禁じられており、「迷惑だ」などという発言はハラスメントにあたります。

抜粋ですので詳細は必ず引用元で確認してください。

1.1歳未満の子を養育する被保険者であること(2回まで分割取得可)。
2.育児休業を開始する日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上あること。
3.有期契約労働者のうち、 子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は、出産予定日)から8週間を経過する日の翌日から1歳6か月を経過する日までに、その労働契約の期間(労働契約が更新される場合は更新後のもの。以下同じ。)が満了することが明らかでない者。

出典:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」より抜粋

期間は子が1歳になるまでで、保育園に入園できないなどの事情がある場合は1歳6ヵ月→2歳と延長できます。

休業している間は育休給付金として、育児休業開始日以前180日間の賃金(賞与は除く)÷180×休業日数×67%が支給されます。
月給が300,000円だったら、1,800,000円÷180日(賃金日額10,000円)×67%=6,700円
6700円×30日=月201,000円ですね。(数字が苦手な方は太字だけ読めばOK!

育児休業開始から6ヵ月を経過すると、給付率は67%から50%に低下します。ここはイケてないところですが今回は割愛します。申請方法や手続きなど公式で確認すべきこともやりません。

産後パパ育休の悪くないところに話を戻して、上記を育休本体と定義すると、これとは別に取得可能なんですよ。つまり産後パパ育休をとってもノーカウントで、その後さらに育休本体が取れます。

産後パパ育休とは

産後パパ育休は産後8週間まで、累計4週間を2回に分けて取得できます。この2回に分けてというところが重要かつ素晴らしいのです。厚生労働省から制度の概要を引用します。

厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

文字では分かりづらいですよね。一番右が今までの微妙な育休、左2列が2022年10月からの新しい育休です。今回は国も本気なので、図まで出してきています。

厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

うーん、まだ分かりづらいですよね!一体これのなにが悪くないのか?

一番下の例2を見ていただきたいです。このお父さん、1歳まで4回もバラバラに育休を取っていますよね。

改正前の育休は1歳まで2回がMAXだったんです。それが今回、産後パパ育休で2回、育休本体で2回とそれぞれ分割できるようになりました。

繰り返しですが、この分割できるという点が重要なのです。心理的にもまとめて休むのは気が引けますが、1歳まで細切れに4回も休業できるのは良いですよね。育休というと数ヵ月は休業するイメージがあると思いますが、1週間だろうと極論1日だって育休は取っていいんです。

それもありますが、扇の要はなんといっても社会保険料の免除です。

月末さえ休めば社会保険料が免除される

そもそも社会保険料っていくら?

産後パパ育休に限らず、ママの産前産後休業や育休本体を取っているうちは、社会保険料の支払いが免除されます。

社会保険料の免除ってすごいんですよ。実は同じ法に規定されている介護休業中や、ケガや病気で休んでいる期間(労災、傷病手当を受給中)も社会保険料は免除されません。産休と育休だけに認められた特権なのです。国の本気度合いが見えます。

社会保険料って毎月いくら払っているか、ご存知ですか?
正確には「標準報酬月額」というものを使いますが、40歳未満の方はざっくり額面金額の14%ほどが健康保険料と厚生年金保険料で毎月の給料から引かれています。額面が300,000円であれば、大体42,000円ぐらい引かれているはずです。確認してみてください。

育休中はこの社会保険料の支払いが免除されます。しかも年金の計算上は納めたものとして扱われるので、老後の年金も増えてただただお得というわけです。

しかし社会保険料を免除してもらうためには、休業の取り方に一定の要件があります。少しややこしいので、丁寧に解説します。

社会保険料免除の条件を徹底解説!【カレンダー付き事例多数】

産後パパ育休で社会保険料を免除してもらうには、休業日の取り方が重要です。ここを失敗すると免除とならないので、注意してください。

社会保険料免除の対象となるのは以下のものです。

①育児休業等の開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの保険料
②育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合の保険料
出典:日本年金機構「令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

ちょっとなにいってるかわかんないですよね。「そういうとこだぞ!」と言いたくなりますが、ちゃんと噛み砕いて解説します。

①は、要は月末に育休を取っていれば日数は関係なしに免除されます。極端な話、10月31日だけの育休でも社会保険料は1ヶ月分免除されます。(先程の標準報酬月額300,000円の例だと約42,000円免除)

産後パパ育休・社会保険料免除・月末育休

1日だけ育休を取っても給与収入は大して減りません。給与に代わって67%の育休給付金も支給されるので、ほぼノーダメージで社会保険料の免除を受けることができます。
(ただし、労働日を必ず1日は含める必要があるので、31日が会社の休日である場合は免除となりません)

しかし、これだけだと例えば10月31日のみ休んだ人は社会保険料が免除されて、10月1日〜10月30日まで休んだ人は免除されないことになります。

さすがにこれは不公平だ!ということで新設されたのが、②の「14日要件」です。同月内で14日間休業すれば、月末に休業していなくてもその月の社会保険料が免除されます。

産後パパ育休・14日要件

ただ注意点もあって、14日要件は「育児休業等開始日が含まれる月」に14日以上休業した場合です。

例えば10月31日から11月20日まで連続で休業した場合、11月に14日以上休んではいますが、育児休業開始日は10月ですよね?

この場合は、10月分は月末に休業しているので免除されますが、11月分については免除されません。これは11月20日までについて「前月から引き続いての1つの休業」と判断され、14日要件に当て嵌まらず月末も休業していないためです。

厚生労働省<育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A>問7を参考に作成

奇妙な話ではありますが、このパターンで11月分も免除を受けたい場合、11月中にどこかで休業を一旦終了させて、新しく14日以上の休業を取り直す必要があります。

産後パパ育休、月末育休と14日要件
厚生労働省<育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A>問7を参考に作成

最後にもうひとつ、14日要件は連続でなくても前月から跨がない育休であれば満たします。業務が忙しい時期を避けて取得できますし、育休日数は会社の休日も含めて計算するので、気を遣う場合は土日を含めてしまってもかまいません。

パパ産後育休・14日要件
厚生労働省<育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A>問8、問9、問10を参考に作成

特に赤ちゃんの誕生が月初めであった場合、パパ産後育休は生後8週(56日)までなので月末を2度跨げないケースがあります。その場合にはひと月目は月末休み、ふた月目はどこかで14日要件を満たす休業を作ることで、社会保険料免除を2度受けることができます。

手取り額をざっくり計算します

産後パパ育休で手取りが増える

標準報酬月額300,000円の人が、月末に10日間の育休を取得した場合の手取り額を計算します。所得税は家族構成などにもよるので省きますが、育休給付金は非課税なので当然育休取得側が有利です。

まず育休を取らなかった場合は、300,000円-42,000円(社会保険料)-1500円(雇用保険料)=256,500円です。(ここから所得税が引かれて、住民税(後述)を除いた手取りはだいたい250,000ぐらいになります)

育休を取った場合の収入は給与と育休給付金に分けて考えます。
給与は20日分なので200,000円-1000円(雇用保険料)=199,000円。
育休給付金は100,000円×67%=67,000円。
給与と育休給付金を合わせて、収入は199,000円+67,000円=266,000円です。育休部分は非課税なので、所得税も育休を取らなかった場合より安くなります。

このように社会保険料免除のメリットが減収を上回るので、育休を取った方が手取りが上がってしまうケースがあるのです。

制度上、お金の流れとして一番お得なのは「月末の1日だけ育休をとる」ことです。ただ倫理的に推奨しにくいので、あえて10日間の休業で試算しています。

住民税への影響

住民税を計算に含みませんでしたが理由があって、住民税は前年度の所得で計算しますので、どちらのパターンでも税額は変わらないというところです。

逆に言えば育休を取った方が次の年の住民税額は下がります。育休給付金は非課税だからです。

住民税額が下がるということは、次年度以降子どもを保育園に入園させる場合、保育料が下がる可能性があります。保育料は住民税の金額によって区分が決定されるからです。区分の幅は自治体によって違いがあるので、必ずしも下がるとも限りません。ここは沢山休んで給与を落とした方が有利なところです。

ただし「1日育休」などあまり給与が減らない休業を連発した場合、「所得は減らず社会保険料控除だけが減る」という関係になるので、むしろ課税所得が上がり住民税の負担が増えるパターンもあると思われます。普通に数日休めば起こり得ませんし、それでも社会保険料免除のメリットの方が大きいです。

有休取るぐらいなら育休を取りましょう

何度も強調してきた通り、産後パパ育休は2回に分けて取得できます。休業の上限は4週(28日)ですので、試算例だとまだ18日残っています。

現実としてそこまでダイナミックに休めるのか、という問題がありますが、月末さえ休めば社会保険料は免除されますので活用しましょう。

そして産後パパ育休の終了後、1歳までさらにもう2回育休本体を取得できます。給付金や社会保険料免除の仕組みは産後パパ育休と変わりません。

今は有休の消化は義務になりましたので、育休を取得しない86%の男性も有休は取っていると思います。職種によって育休の取得が難しいことは理解していますが、たとえば1日の有休を月末育休に置き換えるだけで、1歳までに社会保険料免除を4回も受けることができます。

今回の改正が意外と悪くないという点はここにあります。ちなみに産後パパ育休の上限である生後8週を跨いで休業した場合、その時点で育休本体の1回目が始まったと見なされます。

改正以前は「賞与月に1日育休で社会保険料免除」というスキームが一部で横行しましたが、賞与にかかる社会保険料に関しては今回の改正で「1ヶ月超の休業に限り免除する」ことになりました。

まとめ、制度を活用してかけがえのない時間を

ここまで産後パパ育休の制度をわかりやすく解説するために「月末さえ休めば」「得する休み方は」という論調できましたが、この記事は金銭的な得をしてほしくて書いたのではありません。

冒頭にも述べた通り、日本においてパパが育休をとらない理由で常に上位なのは「収入が下がるから」です。家族が増えれば父親としての責任も増しますので、もっともな理由です。

しかし今回見てきたように、賢い休み方をすれば大きく収入が下がる心配はありません。

産後パパ育休に本来あるべき姿は、ある程度の期間仕事を休んで育児に携わり、ママの出産後のサポートをしっかり行うことだと思います。

一方で男性の育休取得率13.97%という現実を見れば、まずは「育休は損じゃないんだ」というところから始めれば変わってくるのではないかと思い、今回はお金に特化して産後パパ育休について解説しました。

以上、少しでも参考になれば幸いです!

※実際にご自身の休業を検討される際は必ず会社の担当者や社労士に相談してください。

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